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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)472号 判決

大阪府吹田市津雲台二丁目二番C四三-二〇二

原告

佐々木勝

奈良県生駒郡斑鳩町興留八丁目二番九号

原告

中村一郎

奈良市六条西三丁目二六-六号

原告

岩間寛

原告ら訴訟代理人弁護士

中村康彦

濱﨑憲史

濱﨑千恵子

右輔佐人弁理士

福島三雄

東京都千代田区霞が関三丁目三番二号

被告

日本道路公団

右代表者総裁

鈴木道雄

右代理人

大野浩

大阪市中央区島之内一丁目一四番一四号

被告

石倉金属株式会社

右代表者代表取締役

石倉健一

被告ら訴訟代理人弁護士

荒木秀一

右輔佐人弁理士

鈴江武彦

風間鉄也

布施田勝正

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求の趣旨

被告らは、連帯して、原告らに対し、金五〇〇〇万円及びこれに対する被告日本道路公団については平成四年一月三一日から、被告石倉金属株式会社については同月三〇日(各訴状送達日の翌日)から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  前提事実

1  原告らは、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という)を共有する(争いがない)。

発明の名称 アーチ形防音壁

出願日 昭和四九年三月一四日

出願番号 特願昭四九-二九四九六号

出願公告日 昭和五四年五月二五日

出願公告番号 特公昭五四-一二七四三号

設定登録日 昭和五四年一二月一四日

登録番号 第九七九五七四号

特許請求の範囲 「1 鉄道軌道の両側面へ門形梁3を所要の間隔でもって樹立して架設し、該門形梁に上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもって対向させ、上方へ吹抜け状に形成して固着し、該アーチ形防音壁取り付け体1、1の内側に防音板4を装着して形成することにより、遮音と吸音(別添特許公報(一)〔以下「公報」という〕記載の「遮音」は誤記と認める〔甲九〕)効果をもたせるとともに、列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR2状に形成した部分でもって導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R2面でもって投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によって防音するように形成したことを特徴とするアーチ形防音壁。」

2  業として、被告日本道路公団(以下「被告公団」という)は、その管理運営する自動車道路において、別紙イ号、ロ号及びハ号物件目録記載のアーチ形又は半アーチ形防音壁(以下「イ号物件」、「ロ号物件」、「ハ号物件」といい、一括しては「被告物件」という)を設置使用し、被告石倉金属株式会社(以下「被告会社」という)は、被告公団より注文を受けてこれを製造し、被告公団に販売している(弁論の全趣旨。なお、別紙被告主張イ号、ロ号及びハ号物件目録は、被告物件をより正確に記載したものと認められる)。

二  請求の概要

原告らは、被告物件が本件発明の技術的範囲に属するとして、被告らに対し、本件発明の実施料相当損害金の内金五〇〇〇万円とこれに対する遅延損害金の連帯支払を請求する。

三  争点

1  被告物件は本件発明の技術的範囲に属するか。

(一) 本件発明の技術的範囲は自動車道路に設置される防音壁に及ぶか。

(二) 被告物件は、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」なる本件発明の構成要件を具備しているか。被告物件防音壁上部の構造は、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」と均等と評価できるか。

(三) ロ号及びハ号物件は、特許請求の範囲にいう「両側面へ門形梁3を・・・樹立して架設し、該門形梁に・・・アーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもって対向させ、上方へ吹抜け状に形成して固着し」なる本件発明の構成要件を具備しているか。

2  被告物件が本件発明の技術的範囲に属すると認められた場合、本件発明の実施料相当額はいくらと算定されるべきか。

三  争点に関する当事者の主張

1  争点1(一)(自動車道路に設置のものに及ぶか)

(一) 原告らの主張

本件発明の対象は、鉄道軌道に設置の防音壁に限定されるものではなく、自動車道路に設置される防音壁も含まれる。その理由は以下に述べるとおりである。即ち、発明の詳細な説明において、先ずその冒頭で「本発明は・・・高速自動車道及び一般自動車道に於ける騒音を防止する、アーチ形防音壁に関するものである。」(公報1欄34~36行)と、最後に「又このアーチ形防音壁を交通量の多い自動車道や高速自動車道に設置すれば、トンネル形の防音壁のような、共鳴音の発生や排気ガスの排出装置の必要がなく、又衝立状防音壁よりも、アーチの湾曲面で投射音の内方反射や、回折波による騒音の伝播防止等の効果が特に大きい。」(公報4欄26~32行)と明記されている外、随所に本件発明の防音壁が自動車道へ設置された場合優秀な防音効果を発揮することが記載されている。特許請求の範囲の記載は、適用例の典型として鉄道軌道を例示したに過ぎないことは明らかである。特許請求の範囲に「鉄道軌道の」と記載されている部分は、適用範囲の例示に過ぎず、作用効果の記載と同様に、本件発明の構成要件ではない。

なお、出願当初の明細書の特許請求の範囲の記載は、「鉄道軌道又は高速自動車道の両側面に吸音板(4)を組立てて・・・」であり、作用効果は特許請求の範囲中には記載していなかったが、担当審査官より発明の名称に「鉄道軌道及び自動車道のアーチ形防音壁」のように用途を付するように指示を受けた。しかしながら、右指示に対し出願人が「用途は鉄道軌道と自動車道に限らず多方面の適用が考えられる」旨の意見を具申したところ、同審査官より「そのように上を曲げただけで今までになかった全く新しい効果が出る発明であれば、それが分るように特許請求の範囲に作用効果を記載すべきである。また、用途が多方面にわたるのであれば、実施例の記載は一つでよい。」との指示を受けた。そのため、出願人は用途を限定するような名称変更をしなくてもすむように、その指示に従って補正書を提出したのである。補正の際、出願当初の特許請求の範囲記載の「高速自動車道」部分を削除したのは、本件発明の適用範囲が、一般国道、都道府県道、モノレール、工場、工事現場等、著しい騒音を発生する場所の多方面にわたって有効であり、適用範囲の全てを記載することが困難であるため、逆に一例を表示するに止めたにすぎず、「鉄道軌道」に限定する趣旨でしたものではない。出願人がそのような不利益、無意味な限定を自ら行うなどは常識的にあり得ないことである。そのような限定の必要があったのであれば、発明の詳細な説明も同時にその趣旨に沿うようなものに補正されているはずであるが、前記のとおりそれが補正されることなく特許査定されていることは、そのような限定がされていないことを示している何よりの証拠である。騒音発生源や騒音の性質について、列車と自動車に若干の差異があっても、各騒音の防止技術は共通であり、本件発明のアーチ形防音壁は鉄道軌道にのみ特有の騒音防止技術ではなく、審査手続きも自動車道にも適用されることを前提に、主として特許公報(特公昭五二-一九九〇三号)所載「高速道路における騒音防止装置」の発明(以下「先願A発明」という。別添特許公報(二)参照)との違いを明確にすることを目的に表現上の補正が行われたのであって、補正に至る事情は被告らの主張とは全く逆である。

また、本件発明の内容からみても、各騒音の防止技術は共通であり、本件発明は鉄道軌道のみならず自動車道にも適用されるものであることは明らかである。自動車の走行によっても風圧は発生するし、本件発明のアーチ形防音壁がその空気の流れを変え渦流を発生させる等の効果があることは、自動車道においてもなんら変わりはない。

被告らは、本件発明は鉄道軌道用の防音壁に限定される旨主張するが、それは特許法の解釈論をあまりにも曲解するものである。要は、保護の対象範囲をどのように解釈するのが特許法の目的に照らし合理的かということである。仮に特許請求の範囲の記載に不備があったとしても、法律に素人の原告佐々木が担当審査官の指導に全面的に従って補正したものを、しかも本件発明の技術的思想からはなんら自動車道を除外すべき合理的な理由はなく、逆に発明の詳細な説明には前記のとおり自動車道への設置も対象とすることが明記されているにもかかわらず、特許請求の範囲に「鉄道軌道等」と表現せず、又は自動車道をも含む別の表現に依らず、単に「鉄道軌道」と表現したことを唯一の理由に、これを例示と解釈せず、本件発明の対象範囲を「鉄道軌道」に限定されると解釈するのは、条理に反するという外ない。

(二) 被告らの主張

本件発明の適用分野は鉄道軌道にあり、鉄道車両の通過によって生ずる騒音を防止することに限定されるべきである。本件発明は、出願当初の明細書では、特許請求の範囲に鉄道軌道と高速自動車道が併記されていたが、出願人らはその後の自発補正により「高速自動車道」の記載を意識的に削除するとともに、「列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR2状に形成した部分でもって導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R2面でもって投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によって防音するように形成した」の要件を付加したのである。発明の詳細な説明の欄には、鉄道軌道と高速自動車道及び一般自動車道を包含するような記載があるが、明細書全体の記載では、鉄道軌道、特に新幹線軌道に関するもの以外、具体的な記載はない。本件発明のように、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが一致せず矛盾するような場合は、その発明の技術的範囲を、特許請求の範囲の記載に基づいて定めるべきであることは、学説及び裁判例も認めてきたところである。被告物件は、鉄道軌道ではなく高速自動車道等に適用されるものであり、本件発明のような作用効果は奏さない。

原告らは、特許請求の範囲に記載の「鉄道軌道」は適用範囲の例示に過ぎず、本件発明の構成要件ではないと主張するが、特許法三六条、七〇条の趣旨からみて、特許請求の範囲に記載の事項は、すべて本件発明の構成に欠くことができない事項に該当するというべきであるから、特許請求の範囲中の、どの部分かは構成要件ではないと主張することも、それが、どのような構成要件たる事項についての例示かを明らかにすることなく、単に例示に過ぎないとして、特許請求の範囲を拡大解釈することも、許されない。

2  争点1(二)(被告物件はR2状のアーチ形防音壁を具備しているか)

(一) 原告らの主張

本件発明の特許請求の範囲の記載を、発明の目的効果に照らして合理的に解釈すれば、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」とは、「アーチ形防音壁面の先端部が、先願A発明のように、内側上方に湾曲しているものは含まず、逆に外側下方に湾曲したものも除外され、それ以外の防音壁すべて」をいうのである。

また、本件発明の目的・効果として特許請求の範囲に記載されている、「遮音と吸音効果をもたせるとともに、列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR2状に形成した部分でもって導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R2面でもって投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によって防音するように形成した」ものであれば、その「上端部」は、軌道・道路周辺の地形状況によっては、必ずしも「下方へ巻込むように」形成される必要はない。本件発明の基本思想は、鉄道の軌道や自動車道の路側に立設した防音壁の上部を内方に曲げることによって、音を内側に反射させて外方に出さぬようにする点にあるから、少なくとも「アーチ形防音壁面の先端部が、先願A発明のように、内側上方に湾曲しているものは含まず、逆に外側下方に湾曲したものも除外され、それ以外の防音壁はすべて」特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻き込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」と均等と評価されるべきである。

したがって、被告物件は、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻き込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」なる本件発明の構成要件を具備している。

なお、一般的に、R(アール)とは、建設業界等では、直線を曲げたもの、即ち、直線・平面を湾曲させた湾曲線、湾曲面を表現する場合の慣用語であり、Rの湾曲方向は三六〇度の範囲がある。本件発明において、「内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成」する必要があるのは、アーチ形防音壁の「面」であり、防音壁の延長方向である「線」ではない。その面を緩カーブさせるか、角度を付けて折り曲げるかは重要ではなく、また、湾曲・カーブの程度をどの程度にするかについては特許請求の範囲には何らの限定もない。要するに、渦流を発生させ回折波を防止し、投射音を内方に反射せしめる効果を発揮する程度に防音壁(面)が内側下方へ向くように湾曲していれば、本件発明の技術的範囲に含まれるのである。

願書添付図面第1図は実施例図であり、図面の簡単な説明で「2・・・アーチの湾曲面」と表現したのは、実施例図を特定したに過ぎず、第1図の図示内容は「R2状」の内容を特定限定するものではない。本件発明で「アーチ形」と称したのは、鉄道軌道や自動車道等の両側面に防音壁を立設し、アーチのように包みこむ全体の湾曲構造をマクロ的にみたものであって、ミクロ的に実施例図面の「R2」部分を指すものではない。

特許請求の範囲においては、担当審査官より、先願A発明と対比して、先端部が上方に湾曲していないことをはっきりと分るように記載するよう指示を受けたため、Rの形状を内側「下方へ巻込むように」と限定補正したものである。なお、「巻込むように」とは、対向側面に向けて巻込むようにし、両側面全体としてマクロ的にみてアーチ形となるよう表現したのである。実施例図面は新幹線を想定して「R状」の一つの実施例を示したに渦ぎず、新幹線の場合であっても他の実施例(Rの形状)もあり得るのである。

特許請求の範囲の記載文言を「内側下方へ」と補正したのは、次のような経緯である。即ち、昭和五三年五月一一日付第二回拒絶理由通知(甲八)の内容が理解できず、出願人は担当審査官に面会を求め、本件発明について、「本件発明は、中央部に吹抜けを形成することにより、防音壁をトンネル状に連続させることなく壁端部を作り、その防音壁上端部を内側に曲げることによって風の流れを軌道・道路面の上方に誘導し、その先端部で渦流を発生させるものであること、したがって、先端部壁面は公開特許公報(特開昭五〇-五五〇〇七号)所載の「鉄道、自動車道等の防音壁」の発明(以下「先願B発明」という。別添公開特許公報参照)のように、上方に向けて開閉可動するものではなく、またトンネル状に覆ってもならず、吹抜けを設けて上端部壁面は常に下方に向けて固定されるべきこと、また先願A発明のように上方に向けて湾曲してはならない旨を説明したところ、同審査官より、防音壁上端部壁面は常に「内側下方」に向けて固定されなければならないものである趣旨を明確にするために、「内側下方へ」と補正するよう指導を受けたため、同指導にしたがったものである。

被告らは、本件発明の正しい特許請求の範囲を明示するよう釈明を求めているが、あえていえば、それは「上端部を内側に曲げた状態で壁端部を作り、風圧で渦流を発生させて回折音を防音すること、及び投射音を内方に反射させることを目的とした構成である」とでも説明するしかない。

本件発明の防音作用は、次の通りである。即ち、壁面の内側を下から上に上ってきた空気の流れは、先端部で必然的に剥離が生じて渦流が発生する。また先端部で壁面外側の空気と合流することとなり、気流の流速差によっても渦流が生ずる。このように内側下方に向けた有限壁により必然的に発生する渦流によって、上方吹抜けから外側面に回折して通りぬけようとする回折波(音波)を散乱させ(但し、壁端部から離れた所では回折現象は発生せず、指向性音として上方に抜ける)、防音効果を発生するのである。Rの形状がどのようなものであっても流入した空気は吹抜け部から外に出るのであり、本件発明は吹抜けから上方に直線的に抜ける音波(指向性音)を防止する目的は有しない。

被告物件が、衝立状防音壁と異なり、著しい防音効果を挙げているのは、まさに上端部壁面を内側下方に向けて形成されたR状湾曲構造(被告らはこれを「ひさし型」と言い変えているに過ぎない)により、渦流を発生させ回折波を防止する効果と、投射音を内方に反射させ、上方より外側に出るのを防止する効果が付加されているからである。

(二) 被告らの主張

本件発明は、特許請求の範囲に記載のとおり、「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成し」たものに限定される。

特許請求の範囲には、アーチ形防音壁取り付け体の湾曲形状について、〈1〉 アーチ形防音壁取り付け体の上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成したこと、〈2〉 R2状に形成した部分でもって導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させること、〈3〉 渦流を発生させることにより回折波(音波)を防止すること、〈4〉 該R2面でもって投射音を内方に反射せしめること、以上が明記されているのであるから、本件発明の湾曲形状は、単に広くR状であれば足りると解することはできない。本件発明は、「R2状」に形成したアーチ形防音壁端部と相まって、限定された一定の渦流を発生させ、回折波を防止し、投射音を内方に反射せしめるべき、鉄道軌道を対象とするものであり、形成される「R2状」の形状も限定されるものである。

被告物件は、本件発明の必須の構成要件である「R2状に形成した湾曲」を備えるものではなく、R2状の湾曲によって発生した渦流により回折波を防止する技術的思想ないし構成に基づくものでもない。R状湾曲が原告ら主張のようなものであれば、上端部において互いに内側向きに湾曲する両側壁部のうち、一方の内側に沿って下から上に上がってきた空気の流れは、吹抜け部の外側にでるものが多くなり、渦流の発生による回折波の防止が出来なくなるから、原告らの主張は不当である。

本件特許出願人が、出願当初の願書添付明細書の特許請求の範囲における、「内側」を「内側下方」と補正したのは、先願B発明との対比において、同発明との差異を明確にし拒絶理由を回避するためにしたものであるから、本件発明の「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」の形状は「内側」のみでは足りず、「下方」を向いていなければならないことは明らかである。原告らは、内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成する必要があるのは、アーチ形防音壁、即ち面であって、防音壁の延長方向即ち線ではない旨主張するが、先願A発明及びB発明においても、いずれも面でいえば「内側下方」に湾曲しており、これらの発明と区別する意味で「内側下方」と記載したものである以上、本件発明の「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」は原告らのいう「線」方向として下を向いていなければならないことは明らかである。

3  争点1(三)(ロ号及びハ号物件は、「吹抜け状に形成」なる本件発明の構成要件を具備するか)

【原告らの主張】

ロ号及びハ号物件は、道路片側面に半門形・半アーチ形に樹立して架設されているものであり、特許請求の範囲にいう「両側面へ門形梁3を・・・樹立して架設し、該門形梁に・・・アーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもって対向させ、上方へ吹抜け状に形成」とは少し差異がある。しかし、本件発明の基本思想は、鉄道の軌道や自動車道の路側に立設した防音壁の上部を内方に曲げることによって、音を内側に反射させて外方に出さぬようにする点にあり、特許請求の範囲にいう「門形梁3」は、片側にしか住家がない場合や、片側が崖などの地形によっては軌道又は車道の両側面である必要はなく、片側だけでよいわけであるから、半門形・半アーチ形の防音壁は本件発明の防音壁と均等と評価されるべきである。したがって、ロ号及びハ号物件は本件発明の技術的範囲に属する。

4  争点2(本件発明の実施料相当額)

【原告らの主張】

原告らは、被告公団の業務及び被告物件の用途が高い公共性を有していることを考慮し、その差止め請求を思い止まり、使用許諾料の支払を求めて交渉してきたが、被告公団は被告物件がいずれも本件発明の技術的範囲に含まれないと主張し、原告らを全く相手にせず、全国各地で被告物件の増設を続けている。それによる原告らの使用許諾料相当の損害は莫大なものであり、本訴では損害の内金として、とりあえず五〇〇〇万円を請求する。

第三  争点に対する判断

一  出願から特許査定にいたる経過(甲一~一二)

1  本件発明の出願当初の願書添付明細書の特許請求の範囲の記載は、「本文所戴の目的を以つて本文に詳記する如く鉄道軌道又は高速自動車道の両側面に吸音板(4)を組立てて、アーチ状に形成し、該吸音板(4)のアーチの部分の両上端部を内側に湾曲させてR(2)状に形成し、適当なる間隔でもつて互に位置せしめ、もつて上方に吹抜け状にしてなるアーチ形防音壁。」というものであった(甲四)。

2  ところが、昭和五二年七月五日付第一回拒絶理由通知(甲六)があり、担当審査官は、先願A発明を引用し、本件発明は引用発明と同一であると認められるから、特許法二九条の二の規定により特許を受けることができないとした上で、「なお、本願の発明は、アーチの上端部を内側に湾曲させた点で上記引例の発明と相違しているが、その点は単なる設計変更にすぎないものと認める。」との判断を示した。

これに対し、出願人は意見書代用(自発)手続補正書(甲七)を提出して、明細書全文を訂正し、特許請求の範囲の記載は、「鉄道軌道の両側面え門形梁3を所要の間隔でもつて樹立して架設し、該門形梁に上端部を内側に湾曲させてR(2)状に形成して成るアーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもつて対向させ、上方え吹抜け状に形成して固着し、該アーチ形防音壁取り付け体1、1の内側に吸音板4を装着して形成することにより、遮音と吸音効果をもたせるとともに、列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR(2)状に形成した部分でもつて導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R(2)面でもつて投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によつて防音するように形成したことを特徴とするアーチ形防音壁。」と補正した。即ち、当初記載の「鉄道軌道又は高速自動車道」から「高速自動車道」を削除し、「遮音と吸音効果をもたせるとともに、列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR(2)状に形成した部分でもつて導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R(2)面でもつて投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によつて防音するように形成した」との文言を付加した。

3  しかし、再び昭和五三年五月一一日付第二回拒絶理由通知(甲八)があり、担当審査官は、先願B発明を引用し、本件発明は引用発明と同一であると認められるから、特許法二九条の二の規定により特許を受けることができないとの判断を示した。これに対し、出願人は意見書(甲一〇)と手続補正書(甲九)を提出し、特許請求の範囲中の「上端部を内側に湾曲させて」の記載を、「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させて」と限定補正した。

4  その結果、出願公告を経て、特許査定されるに至った。なお、願書添付図面(鉄道軌道における防音壁を図示している)は出願当初のままであり、補正はなかった(出願当初のR2の形状の図示に変更はない)。

二  争点1(二)(被告物件は、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」なる本件発明の構成要件を具備しているか。被告物件防音壁上端部の構造は、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」と均等と評価できるか)

【判断】

前記のとおり、出願人が、第二回拒絶理由通知において担当審査官から、本件発明が先願B発明と同一であると認められるとの判断が示されたのに対し、同引用発明との差異を明確にし拒絶理由により拒絶査定を受けることを回避するために、明細書特許請求の範囲中の「上端部を内側に湾曲させて」の記載を、更に「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させて」と限定補正した事実、及び同引用発明(先願B発明)防音壁の上部は、通常使用状態においては、面としては原告らのいう「内側下方」を向き、全体として見ると原告らのいう「アーチ形」をし、中央が吹抜け状に形成されているものであって、本件発明の「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成」を、願書添付図面第1図及び第2図に図示のとおり、かつ、厳密に特許請求の範囲記載の文言のとおり、防音壁の上端部が防音壁の延長方向である線方向として「下方」を向いているものに限定された形状と解さない限り、本件発明は同引用発明(先願B発明)に包含されてしまう(後願の本件発明が特許される余地がない)ものと認められること、に照らして考えると、「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁」は、願書添付図面第1図及び第2図に図示のとおり、防音壁の上端部が線方向として「下方」を向いている形状のものに限定されると解すべきであり、防音壁の上端部が線方向として「下方」を向いていないものは、特許請求の範囲にいう「上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成」には該当しないといわざるを得ない。

また、本件発明に先行する先願A発明及びB発明(いずれも、防音壁の上部は、原告らのいう「面」としては、内側下方に湾曲又は傾斜し、かつ、中央部が吹抜け状に形成されており、また、B発明は両側の防音壁を全体として見ると、原告らのいう「アーチ状」になっている)が存在する以上、防音壁の上端部が線方向として「下方」を向いていないものについて、均等と認める余地もない。

被告物件はいずれも防音壁の上端部が線方向として「下方」を向いていないから、本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。

原告らは、要するに、渦流を発生させ回折波を防止し、投射音を内方に反射せしめる効果を発揮する程度に防音壁(面)が内側下方へ向くように湾曲していれば、本件発明の技術的範囲に含まれる旨主張するけれども、先願A発明及びB発明があり、それとの差異を明確にする目的で前記の補正をした事実、及び本件特許出願願書添付明細書(特許請求の範囲、発明の詳細な説明)及び図面の記載を併せ考えると、本件発明は、少なくとも、〈1〉 右判示の意味での、上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁と、〈2〉 このアーチ形防音壁を対向させ、上方へ吹抜け状に形成することと、〈3〉 これにより、遮音と吸音効果をもたせるとともに、列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR2状に形成した部分でもって導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R2面でもって投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によって防音するように形成すること、を必須の構成要件としているものと認められ、その構成要件の一つでも具備しないものは本件発明の技術的範囲に属さないものといわざるを得ないから、右〈3〉の構成要件を具備さえすれば本件発明の技術的範囲に属することになる旨の右原告ら主張はとうてい採用できない。

三  争点1(三)(ロ号及びハ号物件は、「両側面へ門形梁3を・・・樹立して架設し、該門形梁に・・・アーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもって対向させ、上方へ吹抜け状に形成して固着し」なる本件発明の構成要件を具備しているか)

【判断】

ロ号及びハ号物件は、道路片側面に半門形・半アーチ形に樹立して架設されているものであり、特許請求の範囲にいう「両側面へ門形梁3を・・・樹立して架設し、該門形梁に・・・アーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもって対向させ、上方へ吹抜け状に形成」なる本件発明の構成要件を具備せず、それに代替する構成も具備しないことは、原告らも自認するところである。

原告らは、本件発明の基本思想は、鉄道の軌道や自動車道の路側に立設した防音壁の上部を内方に曲げることによって、音を内側に反射させて外方に出さぬようにする点にあり、特許請求の範囲にいう「門形梁3」は、片側にしか住家がない場合や、片側が崖などの地形によっては軌道又は車道の両側面である必要はなく、片側だけでよいわけであるから、半門形・半アーチ形の防音壁は本件発明の防音壁と均等と評価されるべきである旨主張するが、右構成要件を全く欠如しそれに代替する構成も具備しないロ号及びハ号物件について、均等を論ずる余地はなく、右原告ら主張はとうてい採用できない。従って、ロ号及びハ号物件は、この点からみても、本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。

四  以上のとおりであるから、その余の争点について判断するまでもなく、本訴請求は理由がないといわざるを得ない。

(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 小澤一郎 裁判官 辻川靖夫)

イ号物件目録

別紙(イ)号図面記載の防音壁

【図面の簡単な説明】

上部の図面は断面図であり、下部の図面は斜視図である。

3 自動車道の両側面に所要の間隔をもって樹立して架設した門形梁

1 門形梁に、所要の間隔をもって対向させ、上方へ吹抜け状に形成して固着した防音壁取り付け体

4 防音壁取り付け体の内側に装着した防音板

以上

(イ)号図面

〈省略〉

ロ号物件目録

別紙(ロ)号図面記載の防音壁

【図面上の簡単な説明】

上部の図面は断面図であり、下部の図面は斜視図である。

3 自動車道の片側面に所要の間隔をもって樹立して架設した半門形梁

1 門形梁に固着した防音壁取り付け体

4 防音壁取り付け体の内側に装着した防音板

以上

(ロ)号図面

〈省略〉

ハ号物件目録

別紙(ハ)号図面記載の防音壁

【図面の簡単な説明】

上部の図面は断面図であり、下部の図面は斜視図である。

3 自動車道の片側面に所要の間隔をもって樹立して架設した半門形梁

1 門形梁に固着した防音壁取り付け体

4 防音壁取り付け体の内側に装着した防音板

以上

(ハ)号図面

〈省略〉

被告主張イ号物件目録

(1)自動車道の両側面へH形鋼で形成される両側支柱部3a、3bと、該両側支柱部3a、3bの上端に所定の傾斜角をもって斜め上方へ張出した両側傾斜部3c、3dと、該両側傾斜部3c、3dの先端を連結する水平梁部3eとからなる門形梁3を、所要の間隔でもって樹立して架設し、(2)該門形梁3の左側支柱部3a、3aの間および右側支柱部3b、3bの間に複数枚の細長い鋼板パネル14を接合状態で装着し、(3)該門形梁3の両側傾斜部3c、3dおよび水平梁部3eを形成しているH形鋼のウェブ部Wにフランジ部FとL形金具15によって取り付け体等を介在させることなく吸音パネル4を直接装着し、天井中央部分17には吸音パネル4が装着されない吹抜け開口を形成したひさし形遮音壁であって、

これにより、遮音と吸音効果をもたせるとともに、自動車Cが走行して発生する騒音を鋼板パネル14で形成される遮音側壁14a、14bおよび吸音パネル4で形成される遮音ひさし壁4a、4bの遮音、吸音の効果によって騒音防止するようにしたもの。

第1図ないし第3図

〔イ号図面〕

〈省略〉

被告主張ロ号物件目録

(1)自動車道の片側立上がり部5aに、上方が車道側にひさし状に張出すように湾曲されたH形鋼で形成される複数本の支柱13を、所要の間隔でもって樹立して架設し、(2)前記各支柱13のH形鋼のウェブ部Wに、支柱湾曲形状と相似的な湾曲形状をもつ中間フランジ形成体3fを支柱H形鋼のフランジ部Fとの間に吸音パネル4を挿入できる間隔を設けて固着している、(3)前記各支柱13に複数枚の細長い吸音パネル4を中間フランジ形成体3fと支柱H形鋼のフランジ部Fとの間に順次落とし込み支柱13に直接装着した、湾曲ひさし形遮音壁であって、

これにより、遮音と吸音効果をもたせるとともに、自動車Cが走行して発生する騒音を吸音パネル4で形成される湾曲ひさし形遮音壁の遮音、吸音の効果によって騒音防止するようにしたもの。

第1図および第2図

〔ロ号図面〕

〈省略〉

被告主張ハ号物件目録

(1)自動車道の片側立上がり部5aに、上端部から車道側に斜め上方へ突出する斜行張出部材13bを設けたH形鋼で形成される複数本の支柱13を、所要の間隔でもって樹立して架設し、(2)前記各支柱13のH形鋼外側フランジ部F'(車道側に位置しないフランジ部)に、パネルガイド部材3gを支柱13のH形鋼の内側フランジ部F(車道側に位置するフランジ部)との間に吸音パネル4を挿入できる間隔を設けて固着している、(3)前記各支柱13に複数枚の細長い吸音パネル4をパネルガイド部材3gと支柱H形鋼の内側フランジ部Fとの間に順次落とし込み支柱13に直接装着した、屈折ひさし形遮音壁であって、

これにより、遮音と吸音効果をもたせるとともに、自動車Cが走行して発生する騒音を吸音パネル4で形成される屈折ひさし形遮音壁の遮音、吸音の効果によって騒音防止するようにしたもの。

第1図および第2図

〔ハ号図面〕

〈省略〉

特許公報(一)

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告

〈12〉特許公報(B2) 昭54-12743

〈51〉Int.Cl.2E 01 F 7/00 E 01 B 19/00 識別記号 〈52〉日本分類 87 A 05 78 A 8 庁内整理番号 6541-2D 7805-2D 〈24〉〈44〉公告 昭和54年(1979)5月25日

発明の数 1

〈54〉アーチ形防音壁

〈21〉特願 昭49-29496

〈22〉出願 昭49(1974)3月14日

公開 昭50-121909

〈43〉昭50(1975)9月25日

〈72〉発明者 佐々木勝

〈71〉出願人 佐々木勝

香川県香川郡塩江町大字安原上東385の6

同 中村一郎

堺市茶山台2の1

〈56〉引用文献

特公 昭52-19903

特開 昭50-55007

〈57〉特許請求の範囲

1 鉄道軌道の両側面へ門形梁3を所要の間隔でもつて樹立して架設し、該門形梁に上端部を内側下方へ巻込むように湾曲させてR2状に形成して成るアーチ形防音壁取り付け体1、1を所要の間隔でもつて対向させ、上方へ吹抜け状に形成して固着し、該アーチ形防音壁取り付け体1、1の内側に防音板4を装着して形成することにより、遮音と遮音効果をもたせるとともに、列車が走行して発生する風圧を、アーチ形防音壁端部のR2状に形成した部分でもつて導風せしめ、空気の流れる方向を変え渦流を発生させることにより、回折波(音波)を防止し、又該R2面でもつて投射音を内方に反射せしめ、遮音、吸音、反射、回折波の防止等四者の効果によつて防音するように形成したことを特徴とするアーチ形防音壁。

発明の詳細な説明

本発明は鉄道に於ける軌道、特に新幹線軌道、や高速自動車道及び一般自動車道に於ける騒音を防止する、アーチ形防音壁に関するものである。近年騒音問題が喧伝される中にあつて、特に列車騒音や自動車道の騒音が大きくて、その対策が困難を極めているが、これは立地条件が野外であり、又気象の条件による影響が極めて大い為である。したがつて現在行つている軌道や車道の両側面に吸音板を衝立状に設置する方法では騒音の防止が困難である。特に新幹線軌道に於ける衝立状の防音壁に於ては、好状件時に約2ホーン~3ホーンの減音ができるが、気象の状態、即ち風向、風速、気温、湿度等によつては全く防音効果を発揮し得ない場合が多々ある。これは音波の屈折即ち可聴周波の音波は温度の不均一分布や風などによる大気中の音波の異常伝搬によるものであり、又湿度が多くなると空気の密度が大きく成る。したがつて音圧が高くなり騒音が大きくなる現象等の原因によるものである。又音波の回折現象による影響が特に大きい。したがつて従来の防音方法即ち衝立状に形成した防音壁では、防音が困難である。これは投射音に対する遮音、即ち透過損失のエネルギーと吸音効果による吸音エネルギーの両者を加算した音のエネルギーの量よりも、防音壁を回折し、裏面へ伝播して拡散、放音する回折波音のエネルギーの方が大きいために、騒音の防止ができないのである。

本発明アーチ形防音壁は上記のような音波の屈折、回折、及び遮音、吸音効策をも含めて効果的に防音する如く形成したものである。

次に本発明を実施例に基いて説明する。

第1図及び第2図に示すように、鉄道軌道の側溝部5に門形梁3を所要の間隔でもつて樹立せしめて設置し、該門形梁にアーチ形に形成した吸音板取り付け体1、1の湾曲部を下方へ巻込むように形成し内側に対向せしめて固着し、該アーチ形吸音板取り付け体1、1の内側面に吸音板4を装着して形成したものである。湾曲面2は風圧発生時に導風板の働きをして、気流の一部を渦流に変える働きと、投射音を内方に反射させる如く形成したものである。7は軌道上に設置した枕木、8は枕木7の上に設置したレールである。6は車輌9の車輪である。10は吸音板4に設けた吸音孔で11は吸音板に内装した吸音材である。12は車輛上部に設けたパンターグラフで13は動力線ケーブルである。

EはA、B間の巾を表わす記号で、天井の中心部B、B間は吹抜け状に形成し成るものである。上記構造に成るアーチ形防音壁の内部を車輛9が進行してくると、車輛によつて排除される空気はアーチ形防音壁の天井部B、B間を吹抜ける。列車の騒音は軌道と車輪の衝撃音、車体より発する駆動音と空気と車体の摩擦音、パンターグラフの摩擦音等であるが、このうち軌条と車輪の衝撃音が特に強大である。これは車輪のタイヤー表面にある微細な突起と、レール表面にある微細な凹凸が、高速回転する車輪によつて衝撃して発生する騒音である。したがつて強大な衝撃のエネルギーより発生する騒音も又強大である。したがつて新幹線軌道に於ける騒音が特に大きく、又其の対策が極めて困難である。現在施工されている衝立状の防音壁では防音ができないのは、騒音の伝播拡散の大半が回折波によるためである。本発明アーチ形防音壁を新幹線軌道に設置した場合の作用及び効果の概要。

第1図のようにアーチ形防音壁内を車輛が進行してくると、内部の空気は車国内人によつて押圧され壁面を伝わつて上部のB、Bの間より排除される。新幹線車輛は時速200KMであり、これを秒速すると、約555M/毎秒となる、したがつて排除される空気の流速も、又瞬間的にはこれに見合うような速さになる。したがつて風圧も又強力である。前述のように、高速回転する車輪のタイヤーと、レールの衝撃によつて発生する騒音の投射音の一部は、壁面に設けた吸音板によつて吸音されるが、大半は吸音板の表面を伝播して上方に空気と共に放出して放音する。したがつて防音壁の上部に空気抵抗をもたない衝立状の防音壁は防音効果が少なく、又回折波の影響が少なく、又回折波の影響が特に大きい。したがつて騒音防止が極めて困難である。

本発明アーチ形防音壁は、車輛によつて急速排除される空気の一部、即ち壁面にそつて上昇する気流を、アーチの湾曲面で方向転換させることによつて、渦流を発生せしめ空気の渦流で車輛側部を包み込むようにして壁面を伝播する回折波を抑制すると共に、投射音をアーチの湾曲面でもつて内方に反射させて騒音の外方拡散を防止する等の防音効果を持つており、又上述のアーチの湾曲面の働きにより防音壁の天井、即ちB、B間の吹抜け部の間隔を、比較的広くとつても防音効果には影響が少くない。したがつて防音壁内の風圧底下、及び進行する車輛の前方に発生するドツプラ効果による騒音の増大防止等又対向する車輛のすれちがい時に発生する強力な風圧、騒音を防止する効果が特に大きい。以上のように本発明アーチ形防音壁は、吸音、遮音は勿論特に難視されている回折波の伝播防止等ができる、高性能を持つ防音壁である。一般に防音壁の形状はトンネル形が、完全防音の方法とされているが、トンネル形に形成すると二次公害の発生が起きる、即ちトンネル内の風圧が大きく共鳴音が異状に高まり、車輛の室内騒音が大きくなる。

したがつて車輛の防音装置をしなくてはならない。これは現在の新幹線でトンネルが多く、更にその延長ともなるので問題である。又トンネル内の風圧が高まりドツプラ効果を発生させ、トンネルの出入口の騒音が極めて大きくなり、その対策が又極めて困難である。したがつてトンネル形よりも本発明アーチ形防音壁の方が、前記のような防音効果をもつており効果的である。又このアーチ形防音壁を交通量の多い自動車道や高速自動車道に設置すれば、トンネル形の防音壁のような、共鳴音の発生や排気ガスの排出装置の必要がなく、又衝立状防音壁よりも、アーチの湾曲面で投射音の内方反射や、回折波による騒音の伝播防止等の効果が特に大きい。以上のように本発明アーチ形防音壁は極めて優秀なる防音効果を発揮する防音壁である。

図面の簡単な説明

第1図は本発明アーチ形防音壁内を車輛が進行する状態を示す図、第2図は軌道に設置したアーチ形防音壁の斜視図、第3図は防音壁の内側面に装着する吸音板である。

1…アーチ形防音壁の吸音板取り付け体、2…アーチの湾曲面、3…門形梁、4…吸音板、5…軌道側溝部、6…車輪、7…枕木、8…レール、9…車輪、10…吸音孔、11…吸音材、12…パンターグラフ、13…動力線ケーブル。

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

特許公報(二)

〈19〉日本国特許庁 〈11〉特許出願公告

特許公報 昭52-19903

〈51〉Int.Cl2. E 01 F 1/00 E 01 B 19/00 識別記号 〈52〉日本分類 87 A 05 78 A 8 庁内整理番号 7611-26 7401-26 〈44〉公告 昭和52年5月31日

発明の数 1

〈54〉高速道路における騒音防止装置

〈21〉特願 昭48-60158

〈22〉出願 昭48(1973)5月28日

公開 昭50-8343

〈43〉昭50(1975)1月28日

〈72〉発明者 藤井厚孝

堺市南三国丘町3丁2の20

〈71〉出願人 共英製鋼株式会社

大阪市城東区古市3の1の45

〈74〉代理人 弁理士 林清明

(公害防止関連技術)

〈57〉特許請求の範囲

1 道路側面に夫々対向して支柱を樹立せしめ、この支柱上部間に水平継合材を架設し且隣接する支柱間に多数の横桟を設けてトンネル形の骨組を構成し、この骨組の両側面に吸音板を以て覆わせると共に吸音板の一部を外部を観るための透視板とし、且骨組上部の水平継合材には吸音板を道路延長方向に交叉して垂設すると共に道路両側下部に、路面方向の音を吸収するための吸音溝を設けることにより、この吸音溝と上記垂設吸音板と、側面の吸音板の三者によつて立体的な消音を行わせるようにしたことを特徴とする高速道路における騒音防止装置。

発明の詳細な説明

本発明は高速道路やその他一般自動車道路における騒音を防止する装置に関するものである。

従来の高速道路では道の外側にガードレール等を設けているが、これは安全性のためで騒音防止としては全く無防備であつた。このため道路沿線の住民から騒音による苦情が続出し、騒音を減ずるためにガードレールに吸音パネルを取りつけたり或いは防音林を採用したりしているが、これらの方法では防音林は特に市街地には適さなかつたり、防音効果が芳しくない。

本発明はこれに鑑みてなしたものである。

以下本発明を実施例に基いて説明する。図に於て1はH型鋼、パイプその他の形状を有する支柱で、この支柱1は第1図に示す如く彎曲せしめこれを道路の両側部に互に対向するように夫々樹立せしめる。このとき対向する支柱1、1の上部の間隔を底部より小さくなるようにし、且この支柱1、1の上部間に水平継合材2を架設し、対向する支柱1、1間を一体に連繋する。

このようにして道路の長手方向に亘り任意間隔もしくは定間隔に支柱1、1……を略アーチ形に樹立し、この隣接する支柱1、1間に複数本の横桟3、3……を設けてこれ等支柱1、水平継合材2.横桟3にてアーチ形の道路上方を覆うようになしたトンネル形の騒音防止装置の骨組を構成するものである。そしてこの支柱1や横桟3を用いて所要の大きさを有する吸音板4、4……を取りつけるものであり、この吸音板4は道路の両側面のみとし、道路の上方を開口し、水平継合材2に道路延長方向に交叉して吸音板4αを点々として散在的に垂設し、この垂設された吸音板4α、4α間に於て排気ガス等を外部に導き放出せしめる。又道路の側面下部には吸音溝H、Hを設け、これによつて路面方向の騒音を吸収させて、側面の吸音板と相俟つて吸音効果を挙げんとするものである。

さらに道路側面には車輛運転者或いは同乗者がトンネル外の景色を観賞できるように吸音板の一部を代えて透明のガラス又は合成樹脂板より成る透視板5を取り付けるものである。尚図中Gはガイドレール.Lは中央分離帯を夫々示すものである。

而して本発明による時は道路の両側面を吸音板にて完全に遮蔽し、道路両側下部には路面方向の音を吸収する吸音溝を設け、且上部に吸音板を垂設しているため騒音は上部の吸音板、側面の吸音板、路面の三者によつて立体的な消音せられ、排気ガスの放出はトンネル上部に垂設された吸音板間にて自然に行える利点があり、さらに吸音板によつて遮られた側面に透視板を取りつけているためめともすれば退くつになり易い同乗者に外部の景観を楽しませることができる効果がある。

図面の簡単な説明

第1図は縦断正面図、第2図は側面図である。

1……支柱、2……水平継合材、3……横桟、4……吸音板、5……透視板、G……ガードレール、H……吸音溝、L……中央分離帯。

〈56〉引用文献

特開 昭49-17026

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

特許願

(2,000円)

昭和48年9月20日

特許庁長官 斎藤英雄殿

1.発明の名称

鉄道(テツドウ)、自動車道等(ジドウシヤドウナド)の防音壁(ボウオンヘキ)

2.発明者

居所 東京都千代田区大手町(チヨダクオオテマチ)二丁目2番1号

石川島播磨重工業株式会社 本社内

氏名上野顕(ウエノアキラ)(外1名)

3.特許出願人

住所 東京都千代田区大手町(チヨダクオオテマチ)二丁目2番1号

名称 (009)石川島播磨重工業(イシカワジマハリマジュウコウギョウ)株式会社

代表者真藤恒(シントウヒサシ)

4.代理人

居所 東京都千代田区神田鍛冶町1丁目5番地(村山ビル)

電話(256)5981(代表)

氏名 (6223) 辨理士 山田恒光

5.添附書類の目録

(1)明細書 1通

(2)図面 1通

(3)書副本 1通

(4)委任状 1通

〈19〉日本国特許庁

公開特許公報

〈11〉特開昭 50-55007

〈43〉公開日 昭50.(1975) 5.15

〈21〉特願昭 48-106289

〈22〉出願日 昭48.(1973)9.20

審査請求 未請求

庁内整理番号 6671 26 6671 26

〈52〉日本分類 78 A8 87 A05 〈51〉Int.Cl2. E01B 19/00

明細書

1.発明の名称

鉄道、自動車道等の防音壁

2.特許請求の範囲

路面側部に所定間隔をおいて植立した支柱と、この支柱に張設され内面に吸音材を施した防音壁と、この防音壁ならびに支柱上方に配設され内面に吸音材を施した開閉自在な防音版とを備えたことを特徴とする鉄道、自動車道等の防音壁。

3.発明の詳細な説明

本発明は新幹線、自動車道等における走行時の騒音を防止するもので、路面側部に所定間隔をおいて植立した支柱と、この支柱に張設され内面に吸音材を施した防音壁と、この防音壁ならびに支柱上方に配設され内面に吸音材を施した開閉自在な防音版とを備えたことを特徴とする鉄道、自動車道等の防音壁に関するものである。

新幹線、自動車道等の走行時に発生する騒音は公害の中で大きな社会問題化されつつあつて、これの防止のための線路または道路の両側に防音壁を設けることが研究され、すでに一部では施工された所もある。

しかし、従来の防音壁による音の減少効果は2ないし3ホーンと非常に小さく、新幹線の場合には高さ1.9mの防音壁を設けているが、住宅附近等では逆に騒音が大きくなるような結果も出ている。

本発明はこれらの騒音源を包むようにして騒音を小さくするようにしたもので、単なる防音壁では防音しきれない地域または大幅な減音を必要とする地域を対象として設置し、上方は開閉できるようにして自動車の場合には排気ガスの換気ができるようにし、新幹線の場合は送電線の点検、補修等ができるようにしたものである。

次に本発明の実施例について説明する。

第1図から第11図は本発明の第1の実施例を示すもので、鋼およびコンクリート梁本体の支柱(1)の上にはコンクリート床版(4)が路面として設置され、自動車道の場合には第1図に示すようにコンクリート床版(4)上を自動車等の車両(5)が走行するようになつている。新幹線の場合には第4図に示すようにコンクリート床版(4)の上にさらにバラストおよび枕木(2)、レール(3)が敷設されて新幹線等の列車(6)が走行し、上方にはパンタグラフ(7)に接する送電線(8)が設置されている。

コンクリート床版(4)両側には所定間隔をおき、自動車または列車の建築限界を犯さないように鉛直支柱(9)を設置する。鉛直支柱(9)はできるだけ高くするのが望ましく、断面は例えばH型として鉛直および屋根部分の風荷重300Kg/m2に耐える断面とする。

鉛直支柱(9)の上端には防音塀の梁(10)を連結装置(12)で連結し、連結装置(12)は梁(10)と支柱(9)をボルト等で連結する。

鉛直支柱(9)の間には鉛直防音塀(11)を設け、また梁(10)の間には防音開閉版(15)を設けてこれらの鉛直防音塀(11)、防音開閉版(15)はボルトで連結して風荷重に対処する。鉛直防音塀(11)、防音開閉版(15)の内側にはさらに吸音材(13)をボルトで連結する。吸音材としてはロツクウール、グラスウール等を耐候性処理し、任意の大きさとして落下しないようにフラツトバー等で押えこむ。

防音開閉版(15)は第1図、第2図、第4図、第5図に示すように、入力で開閉できるようにするため或る幅をもつて切断する。なお防音塀の梁(10)はさらに中央に延長し、床版上方中央で連結してもよい。

鉛直支柱(9)の間隔は例えば通常6m位にし、防音開閉版(15)の幅は例えばその3分の1の2m位にする。防音開閉版(15)相互の目地は第9図に示すように凹凸として重ね合せ、音のもれを防止する。

防音開閉版(15)の上端には第7図に示すように回転用滑車(16)を取り付け、また鉛直支柱(9)の上端にも滑車(17)を取り付けて第7図ないし第11図に示すようにこれらの滑車(16)(17)にロープ(18)を掛け渡し、ロープ(18)を引くことにより人力で防音開閉版(15)を開閉できるようにする。なおロープ(18)の下端にはカウンターウエート(19)を取り付けてく。防音開閉版(15)の開閉は、吸音材(13)の取り付けや清掃、内部点検、架線点検時に行なうものである。

鉛直防音塀(11)は、自動車、列車等の視界を得るために、部分的に透明の樹脂板を取り付けることも可能であるが、この場合その部分には吸音材は取り付けない。

第12図ないし第17図は本発明の第2の実施例を示すもので、第1の実施例と同一部分には同一符号を付してある。

この実施例においては鉛直支柱(9)と防音塀の梁(10)とを円弧状に連続したものとし、その間に防音塀としての防音シヤツター(14)を設け、防音シヤツター(14)は鉛直支柱(9)と梁(10)のH断面の中央に配置して上下できるようにする。防音シヤツター(14)は通常一定位置で固定しておくが、架線の点検、吸音材の取り替え、清掃時のみ開閉する。シヤツター(14)の下部にはカウンターウエートを取り付けておき、人力により下方に引張つて下げ、上にあげるときには逆に上方に押してシヤツター(14)を開閉する。

梁(10)の先端は上端で互に連結してトンネル状にすることもでき、また上端を連結しないでキヤンチレバーとすることもできるが、新幹線等の列車の場合にはシヤツター(14)を完全にトンネル形式にするとよい。また自動車の場合は排気ガスを換気する関係でトンネル上端を一部開放しておく方がよい。

シヤツター(14)の支間は鉛直支柱(9)の支間とし、約3m前後とする。

尚本発明は、図示し説明した実施例にのみ限定されることなく、例えば防音開閉版(15)の回動を電動機等で行うようにすることは任意であり、その他本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更を加え得ることは勿論である。

本発明は以上のように路面の両側を高く覆つているので車両等の走行による騒音が沿線に広がることがないため、充分な防音効果を発揮することができる。

また取付工事にあたつては路面の両側端で工事が行なえるため交通止めにする必要がなぐ、照明、換気に合せて開閉度を調整でき、吸音材の取替や架線の点検も容易に行なうこともでき、列車の場合には完全なトンネル型式としてより一層の防音をすることもできる。

4.図面の簡単な説明

第1図は本発明の一実施例の縦断正面図、第2図は同斜視図、第3図は同側面図、第4図は本発明を新幹線に使用した場合の一実施例の縦断正面図、第5図は同斜視図、第6図は同側面図、第7図は要部の拡大縦断面図、第8図(A)(B)(C)はそれぞれ第7図のA線、B線、C縁における断面図、第9図は第10図のE線における断面図、第10図は第7図を左方から見た側面図、第11図は第7図の斜視図、第12図は本発明の他の実施例の縦断正面図、第13図は同斜視図、第14図は同側面図、第15図は本発明を新幹線に使用した場合の他の実施例の縦断正面図、第16図は同斜視図、第17図は同側面図である。

(4)・・・コンクリート床版、(9)・・・鉛直支柱、(10)・・・梁、(11)鉛直防音塀、(13)・・・吸音材、(14)・・・防音シヤツター、(15)・・・防音開閉版。

特許出願人

石川島播磨重工業株式会社

特許出願人代理人

山田恒光

第1図

〈省略〉

第2図

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第3図

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第4図

〈省略〉

第5図

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第6図

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第7図

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第8図

〈省略〉

第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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第13図

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第14図

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第15図

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第16図

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第17図

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6.前記以外の発明者

居所 東京都千代田区大手町(チヨダクオオテマチ)二丁目2番1号

石川島播磨重工業株式会社 本社内

氏名初沢寿夫(ハツザワトシオ)

特許公報

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特許公報

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公開特許公報

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